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挑戦権への最後の扉は開いた
- 2026年02月08日
- admin
――次は、プレミアへ
山梨クィーンビーズ 84-67 SMBC
(2026年2月7日/ アリーナ立川立飛

プレミアリーグへの挑戦権を手中に収めるために、こじ開ける扉はあと一つ。
SMBCのホーム開催となったアリーナ立川立飛は、入場者数2,012名の観客で埋まった。
小雪が舞うあいにくの天候の中、山梨から駆けつけた多くのファン・ブースターが黄色で観客席を染め、この一戦に懸ける思いを、振りかざすハリセンと声援で表現する。
15時。
クィーンビーズが未来へつなぐ挑戦権を得る、最後の扉を開くための戦いが始まった。
試合は立ち上がりからクィーンビーズが主導権を握った。
最初の得点はドイ・マレム。片山菜々の3Pで9−0と走り、ディフェンスの強度も高く、ボールがインサイドからアウトサイドへとスムーズに動く。SMBCは早々にタイムアウトを要求するが、出原菜月、坂田 侑紀奈も加点し、25−11。理想的な入りで第1クォーターを終えた。

第2クォーターもクィーンビーズのハードなディフェンスは継続される。ただ、SMBCのスリーポイントの確率が徐々に上がり、撃ち合いの展開となる。中盤、オフェンスが一時停滞する時間帯もあったが、ここで井上桃子が連続得点。ゴール下を力強く攻略し、再び流れを引き戻した。

前半終了時点で50−35。リバウンドは25対13と大きく上回り、セカンドチャンスを与えなかったことが15点リードにつながった。一方で、SMBCは第2クォーターだけでスリー6本を沈め、「当たり出した時の怖さ」を今日も漂わせていた。
後半、今日も試合は一変する。
第3クォーター序盤、渡邊愛加の3P、池田沙紀、片山の連続得点で57−37。この日最大となる20点差をつける。しかし、ここからSMBCが本領を発揮する。警戒していたスリーポイントが立て続けに決まり、ディフェンスの圧力を増したSMBCの前にクィーンビーズは得点が伸び悩む。タイムアウトを挟んでも流れは止まらず、SMBCは前からのプレッシャーでバックコートバイオレーションを誘発。会場は完全にホームの空気に包まれた。島村のドライブ、そしてブザービーターで65−58。試合の流れがSMBCに大きく傾き始めた時間帯となった。

迎えた最終クォーター。

SMBCに65−60まで詰め寄られ、クィーンビーズは一時落ち着きを失いかける。しかし、片山のスチールからの得点で踏みとどまる。残り4分9秒、69−65。ここが今日の試合で勝敗を分ける分水嶺となった。
出原の得点、そして池田からマレムへの連係で73−65。残り3分14秒で再び8点差をつけると、ここから空気は変わった。リバウンドを取り切り、井上と渡邊が要所で得点。SMBCのファウルトラブルもあり、クィーンビーズはフリースローで着実に加点する。
最後は84−67。
まさに、残り3分14秒の73−65。
その局面まで劣勢の場面でも声を掛け合いながら耐え、チャンスをものにしたチームが掴んだ勝利であった。
後半のスコアだけを見ると34−29。スリーポイントは両チームとも伸びず、2Pとリバウンド、そして我慢の時間をどちらが耐え切れるかの勝負だった。
勝つか負けるかで天と地の差が生まれる激闘を制したクィーンビーズが突き放し、フューチャーリーグ2位を確定。入替戦でのプレミア昇格への挑戦権を掴む“二つ目の扉”を自らの手で開け、リーグ戦の全日程を終えた。

昨日と今日。
得点経過を追うと、二つの試合はよく似た軌跡を描いている。
前半でリードを奪い、後半の第3クォーターでSMBCの反撃を受け、そして相手の攻撃に耐えながら、第4クォーターで再び突き放すクィーンビーズ。
もともとディフェンスを軸とするチームではあるが、今季のクィーンビーズはシーズンが深まるごとに成熟度を増してきた。言い換えれば、「ディフェンスで試合の流れを渡さない我慢」ができるチームになった。
自分たちの得点が伸びず、点差を詰められた場面でもハドルを組み、集中力を保ち、チャンスが来るまで耐える。その積み重ねが、最後の2試合でもチームを支え続けた。
今季のクィーンビーズは、ディフェンスを軸に“試合を壊さないチーム”になった。
大量得点で押し切るのではなく、我慢し、守り、リバウンドで終わらせる。その積み重ねが、この2位という結果につながっている。
ある日、練習後に石川幸子ヘッドコーチが
「うちのディフェンスを相手に練習しているのだから、もっと点が取れると思う」
と語ったことがある。
それは決して、オフェンスへの不満ではない。
自分たちのディフェンス力が、確実に高まっているという裏付けがあってこその言葉だったのではないだろうか。
フューチャーリーグで築き上げた、このディフェンス。
それが、個の力でも上回る相手が揃うプレミアの舞台で、どこまで通用するのか。
突出した個をチームで守り、チームで崩す。
「ひとりがみんなのために、みんなはひとりのために。愛をもって行動を起こせば、思いに届くのではないか」
石川ヘッドコーチが以前話したこの言葉を、今のクィーンビーズは体現している。
ニックネームは女王蜂。
しかし、その実態はチームのために献身的に戦う働きバチの集団である。
その“働きバチの挑戦”は、41日後。
国立代々木競技場 第二体育館で幕を開ける。


















ヘッドコーチ・選手の談話
石川幸子ヘッドコーチ
序盤からディフェンスを徹底できましたし、オフェンスでも我慢強く時間を使いながら相手を崩すことができました。途中で追いつかれた場面は悔しかったですが、そこを乗り越えて勝ち切れたのは本当に大きな一勝です。
失点の場面は、スリーポイントを意識するあまり1対1の局面を作られてしまいました。そこを止め切れなかったのは課題です。オフェンスでも相手のプレッシャーに押され、自分たちの打てるエリアでシュートを打てず、タフショットが続いて流れを渡してしまいました。
それでも最後は「守って、リバウンドを取る」という部分を全員でやり切れましたし、時間を使いながら冷静に対応して、パスを多く使いチームでシュートを打てたのは良かったです。
昨年と比べて選手たちの判断力は確実に上がっています。今、何をしなければいけないのかをチームで共有できている。そこは大きな成長です。
インサイドではサイズで勝っている分、もっと体を張らなければいけません。入替戦に向けて、ここははっきりとした課題です。
プレミアのチームはプレッシャーのかかるシュートでも決めてきます。そこに負けず、どれだけ我慢強く、よりハードに守れるか。タフなディフェンスから、ボールと人がしっかり動くオフェンスを作っていきたいです。
完全アウェーの雰囲気でしたが、こういう環境で勝ち切れたことは選手たちのメンタルの成長だと思います。山梨から来てくださった黄色の応援が、本当に心強かったです。
キャプテン井上桃子
相手のスリーポイントを止めようという共通認識で入り、序盤はインサイドや3Pも機能して良いスタートが切れたと思います。
ただ、第3クォーター以降は相手がアグレッシブにペイントへアタックしてきて、プレッシャーも一気に強くなりました。そこで押し上げられる場面が増え、ターンオーバーが出たり、オフェンスのリズムが合わない時間帯もありました。
昨日と同じ流れになりかけましたが、相手に勢いがある時間帯は“今は耐える”とみんなで共有していました。誰かが焦っても声を掛け合い、切り替えて次のプレーに移せていたと思います。
優勝できなかったことは本当に悔しいですが、まだプレミアに行くチャンスは残っています。入替戦は2つ勝たないといけない厳しい戦いになりますし、去年の入替戦を見てプレミアとフューチャーの差も感じています。この1か月半がすごく大事になると思っています。
相手の方が高さや能力は上ですが、自分たちが泥臭いプレーを続ければ勝機は見えてくる。最後まで諦めずに勝ちを掴み取りたいです。
アイシン相手でもやることは変わりません。ディフェンスとリバウンドをどれだけ徹底できるか。フューチャーリーグにはいないサイズや能力の選手がいるので、1人に任せるのではなく、チーム全員で止めにいくことが大事だと思います。
今シーズンは全員が「勝ちたい」「入替戦に行きたい」という気持ちを言葉やプレーで表現してくれています。苦しい時も良い時も声を掛け合い、自分たちのやるべきことをやり続けられている。それが今のクィーンビーズの強さだと思います。
ダラーメ マレム ドイ
最初の目標は優勝でした。でも今は2位になって、まだプレミアに行くチャンスがあります。この1か月間で、もっと強くなれるように、自分に必要なことをしっかりやっていきたいです。 チームはシーズンを通してすごく成長していると思います。だんだん良くなってきているので、この期間でさらにレベルアップできるように頑張ります
片山菜々
後半はスリーポイントを何本か打ちましたが入らなくて。ただ、ディフェンスでスティールして得点につなげられた場面は、試合の流れの中でも大事な場面だったと思います。
去年は早い段階で結果が決まってしまっていましたが、今季は最後まで分からない状況の中で、メンタル的にもタフなシーズンでした。でも、みんなが練習してきたことを試合で発揮できていますし、1日目にうまくいかなかったことを2日目にアジャストできるようになっているところは、本当に成長したと感じています。
負けた試合もありましたけど、チームとしてディフェンスの安定感があって大崩れしない。得点を取るチーム相手でも抑えられているのは、「チームで守る」という意識がすごく強いからだと思います。
入替戦は相手に高さもありますし、ベテランの選手もいます。でも私たちはチャレンジャーなので、思い切って挑戦したいです。今日のような雰囲気の中でプレーできたことも、すごく良い経験になりました。
渡邊愛加
最後は全員でリバウンドを取り切るなど、やるべきことを本当にみんなができたから、勝ち切れたと思います。
こんな満員の会場でプレーできる経験はこれまであまりなかったので、とても貴重で楽しい時間でした。完全アウェーの中でも、山梨から来てくれた方やファンの皆さんの声援が本当に大きくて、それが力になりました。
個人的には本当にきついシーズンでした。でも、それ以上に若い選手たちが成長して、1人1人の積み重ねがチーム力になっていると感じています。
去年は3位、今年は2位。少しずつですが確実に上がってきています。プレミアのチームと戦えることに、私たちは失うものはありません。この1年間やってきたことを、誰が出てもやり切る。その準備を、この1か月半の練習で積み上げていきたいです。
最近はホームの来場者も増え、アウェーでも黄色の応援が増えてきて、私が来た頃からは考えられないほど大きくなっています。私たちのバスケットを通して、少しでも多くの人に力を届けられたら嬉しいです。
