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価値ある1勝、ゾーンで主導権を奪取
- 2025年12月21日
- admin
――修正力で流れを引き寄せ、65-52で掴んだ逆転勝利
山梨クィーンビーズ 65-52 三菱電機
(2025年12月21日/小瀬スポーツ公園体育館)
三菱電機との連戦、初戦での敗戦がクィーンビーズの今季リーグ戦の行く末に大きな影響を及ぼすことは、会場を訪れた誰しもが分かっていること。
その上で今日のGame2の結末が、重要であることも。
その気持ちが、間も無くトスアップを迎える選手を大きな声援で後押しする。
それは、石川幸子ヘッドコーチがハドルの中で「私の声が選手に聞こえているか?」と不安になるほどの熱気を帯びていた。
負けられないのは相手も同様で、この一戦に懸ける思いは三菱電機も変わらない。主導権を先に掴みたい三菱電機は、百戦錬磨のベテラン・吉田亜沙美をスターターに起用してきた。
試合は三菱電機の先制で幕を開けた。
序盤から永井、澤が得点を重ね、三菱電機が主導権を握る。対するクィーンビーズも、片山菜々、ダラーメ・マレム・ドイの2Pシュートとアシストで応戦し、4-4と互角の立ち上がりを見せた。
しかし、第1クォーター中盤以降は三菱電機がアウトサイドで優位に立つ。大崎の3Pを皮切りに外角シュートが高確率で決まり、このクォーターの三菱電機は3P成功率75%で9得点を記録した。一方、クィーンビーズは3Pを一本も決めることができず、得点はフリースローとインサイドに限定される。それでも積極的なディフェンスでターンオーバーを誘発し、食らいつく姿勢は崩さなかったが、13-20と7点ビハインドで第1クォーターを終えた。

第2クォーターも三菱電機の流れは続く。澤、コースデイルが3Pを沈め、点差は15-28まで拡大。クィーンビーズはディフェンスリバウンドに苦しみ、オフェンスではタフショットが続く「決めきれない」展開に陥った。

ここでクィーンビーズは、流れを断ち切るためゾーンディフェンスを導入する。これが、この試合最初の明確な変化であった。出原菜月のドライブやフリースロー、池田沙紀の得点で粘りを見せるが、三菱電機は山本の3Pでリードを維持。前半は28-37、三菱電機が9点をリードして折り返した。
前半を通じて、クィーンビーズは12本のターンオーバーを奪いながらも、3P成功ゼロ。リバウンド数でも10-21と大きく後れを取る苦しい内容であった。
後半、第3クォーターも前半途中から導入したゾーンディフェンスを継続する。
片山の得点から反撃を開始すると、守備の連動性と強度が明らかに向上し、三菱電機のターンオーバーを誘発。オフェンスは停滞し、池田が連続して2Pシュートを沈めて、点差は縮まっていった。
38-39と1点差に迫ると、会場の空気一気に変わり完成がクィーンビーズの背中を押す。三菱電機はタイムアウトを要求するが、流れは止まらない。試合の主導権は静かに、しかし確実にクィーンビーズへと移っていった。

三菱電機は大崎の3Pで突き放しを図るが、クィーンビーズは崩れない。高田栞里がペイントを連続して攻略し、残り2分で45-44と、この試合で初めてリードを奪取する。このクォーターだけで三菱電機は11本のターンオーバーを犯し、得点を9に抑えられた。47-46とクィーンビーズが1点リードして最終クォーターへ突入する。
迎えた第4クォーター。
大崎の3Pで49-49の同点とされるが、直後、片山がこの試合チーム初となる3Pを沈め、52-49と再び前に出る。その後、クィーンビーズは高田の2Pシュートでリードを広げ、三菱電機はファウルが嵩む。クィーンビーズはフリースローで着実に加点し、池田の2Pで61-52とすると、井上桃子、ドイが冷静にフリースローを沈め、試合を完全に掌握した。

第4クォーターの三菱電機はわずか6得点。2Pシュート成功率は0%と、オフェンスは完全に封じ込められた。
第2クォーター途中から敷いたゾーンディフェンスを軸に後半を支配し、最後はフリースローで確実に仕留めたクィーンビーズが、65-52で逆転勝利を収めた。

コート上には、昨日の敗戦の悔しさを吹き飛ばすかのように喜びを爆発させる選手たちの姿があり、スタンドではファン・ブースターがその勝利を全身で受け止めていた。
この試合の勝敗を分けたのは、クィーンビーズの持ち味であるディフェンスとリバウンド。ハードなディフェンスで三菱電機のターンオーバーを誘発しながらも、前半は「2点取っても3点を返される」展開に苦しみ、点差を詰めきれなかった。
その流れを断ち切るために敷いたゾーンディフェンスが、チームにスイッチを入れた。前半10-21と大きく劣勢だったリバウンドも、体を張ったプレーによって後半は18-12と逆転。守備から流れを引き寄せ、試合の主導権を奪い返した。
試合後、キャプテンの井上桃子は
「相手のミスを誘発できたので、前から当たることでの疲労は感じずに、『どんどん来い』と思ってやれていました。すごく良い流れでしたし、自分たちの自信になった試合でした」
と振り返る。相手に圧をかけ続けた守備が、スイッチの入ったクィーンビーズのギアを一段、いや二段引き上げた。
前日の試合では、試合中の対応力を欠き白星を逃したクィーンビーズ。しかしこの日は、修正し、やり切った。勝利とともに、この先につながる確かな自信を掴んだ一戦となった。
この日、他会場ではアランマーレが姫路に敗れ、消化試合数の差はあるものの、敗戦数でクィーンビーズと並んだ。
順位争いは、なお混沌としている。
クィーンビーズにとって、負けられない試合が続く状況に変わりはない。
次戦は金曜日、夜開催の姫路戦。
アランマーレを破り、ホームでクィーンビーズを迎え撃つ姫路に対し、それを上回るエネルギーでぶつかることができるか。
試合は、5日後に迫っている。




















ヘッドコーチ・選手の談話
石川幸子ヘッドコーチ
昨日の敗戦の流れもあって、立ち上がりは正直、昨日の悪い展開を引きずってしまった部分がありました。オフェンスも思うように組み立てられず、選手たちに焦りが見えたのは事実だと思います。
ただ、そこでゾーンディフェンスに切り替え、オフェンスでも時間をかけて攻めることを共有してからは、選手たちが落ち着いてプレーできるようになりました。昨日の試合を引きずった状態から、試合の中でしっかり立て直してくれたことは、非常に評価できる点だと思います。
相手の5番ポジションのスリーポイント対応では苦しい場面もありましたが、ゾーンにしたことで全体としては抑えられましたし、リバウンドやルーズボールでは、ベンチメンバーも含めて体を張ってくれました。ディフェンス面での貢献は大きかったです。
ハーフタイムには、言葉にすることをためらいもしましたが、今後のことを考えて三菱電機との得点差を踏まえ「5点以上離されて負けると順位的にも厳しくなる」という話をしました。選手たちがその状況を理解し、不安を跳ね返して勝ち切れたことは、大きな成長だと思います。
今日は最初から応援が非常に熱く、その後押しは本当に大きかったです。
この二日間、大きな声援をありがとうございました。
次の姫路戦は1対1の強いチームなので、個々の特徴をしっかり確認して臨みたいと思います。ありがとうございました。
キャプテン井上桃子
出だしは相手のスリーポイントを許し、自分たちの得点も思うように伸ばせない苦しい展開でした。ただ、前半途中からゾーンディフェンスを敷いたことで守備が機能し、後半も継続して相手の得点を抑えることができたと思います。
得点面では、池田選手のドライブや高田選手の体を張ったプレーなどから流れを作ることができましたし、最後までディフェンスの共通理解を持って遂行できた点は良かったです。決め切れない時間帯もありましたが、ディフェンスで踏ん張り、シュートが入るまで我慢して戦えた試合だったと思います。オフェンスリバウンドでも昨日以上に強度高く体を張れました。
ゾーンプレスでは相手のミスを誘発でき、ターンオーバーを重ねられたことが自信につながりました。昨日からしっかり切り替え、チーム全員で戦えたことは、成長の証だと思います。
次は姫路戦でナイトゲームになります。長距離移動もありますが、試合の入りからしっかり準備し、最初から自分たちの流れに持ち込みたいです。疲労をしっかりケアして臨みたいと思います。
片山菜々
負けられない試合という思いで入りましたが、前半は昨日と同じようにオフェンスが重くなり、ロースコアの展開になってしまいました。
途中からゾーンディフェンスを敷いたことで相手のオフェンスを崩し、ブレイクを出せたのは良かった点です。2日間を通してディフェンスはやりたいことができていましたし、終始アグレッシブに守れたことが、試合を作る上で大きかったと思います。
重い展開の中でも勝ち切れたことは、シーズンを通して見ても大きな1勝です。ベンチメンバーも含めて、リバウンドやルーズボールで体を張ってくれたことが、流れを引き寄せたと思います。体格差のある相手に対して、リバウンドで踏ん張ってくれたメンバーには感謝したいです。
次は姫路戦です。時間は限られていますが、しっかり休んで、絶対に落とせない試合にチームで共通認識を持って臨みたいと思います。
池田沙紀
昨日は悔しい負け方で、自分自身もフィニッシュの部分に課題を感じていましたし、正直、気持ち的に少し攻めづらくなってしまった時間帯もありました。それでも今日は必ず勝たなければいけない試合だったので、責任を持って攻め続けようと思っていました。
シュートが入らない場面でも、コーチ陣、ベンチから「攻め続けていい」「アタックし続けていい」と声をかけてもらい、気持ちを切り替えることができました。シュートを外してもリバウンドを拾ってくれる場面が多く、全員で支えてもらっていると感じながらプレーできたことは本当に心強かったです。
ディフェンスでも終始アグレッシブにやり続けることができましたし、疲れというよりも、最後までやり切れたという感覚の方が強かったです。全員でディフェンスとリバウンドを徹底できた時に、良い流れを作れていると思いますし、そこが今のチームの強さだと思います。
次の姫路戦に向けては、相手がどうというよりも、自分たちのバスケットをしっかりやることが大事なので、短い期間ではありますが、自分の役割を果たせるように準備していきたいです。
高田栞里
昨日の試合では、個人的には練習してきたことが出せて、自信になった部分もありましたが、チームを勝ちに導けなかったことが自分の中では反省点でした。今日は、その反省もあって、チームが勝つために自分ができることをやろうという思いで試合に臨みました。
昨日は試合後、みんな悔しがっていましたが、そこで下を向くだけではなく、全員でしっかり切り替えようという話をしていました。その中で、今日は試合の入りから気持ちを切り替えられていたと思います。
最後まで競った展開でしたが、チームが一体感を持って「この試合は絶対に勝つ」という気持ちを共有し、誰一人下を向くことなく戦えたことが、勝利につながったと思います。苦しい場面でも前を向いてプレーできているのは、チームとしての結束や精神的な強さが出てきている部分だと感じています。
ここからは1試合も落とせない状況が続きますが、一人ひとりが自分の役割を徹底し、相手へのアジャストや、やるべきことを遂行し続けて、隙のないチームとして戦っていきたいと思います。







